講義と実習

緑地環境学専修の講義・実習は、主に農学生命科学研究科生圏システム学専攻の教員により実施されます。講義科目としては、ランドスケープエコロジー、緑地計画学を基礎としつつ、都市・農村計画学、保全生態学など、緑地環境の保全・創出・計画に関連する幅広い科目が用意されています。

3年生の夏・冬学期は、講義と並行して緑地デザインからフィールドワークまで、多様な実験実習に取り組みます。他専修との合同実施の実習が多いのも特徴です。

緑地環境学専修での単独実施となるのは、緑地デザイン実習(S1SP)と緑地環境実地実習(S1〜A2)の2つです。緑地デザイン実習では、公園、オープンスペースの設計を通してランドスケープデザインのスキルを習得します。また、緑地環境実地実習では西東京市の農場、都内の公園緑地、各地の日本庭園での体験的学習を通して、緑地植物の分類・調査・管理方法や、都市緑地の計画・設計の最新の動向、日本庭園をはじめとする伝統的な造園技術について実地で学びます。

他専修との合同実施となる実習では、フィールド科学専修と合同で実施するランドスケープエコロジー実習、保全生態学実習と、応用生物学専修と合同で実施する応用生物学基礎実験Ⅰがあります。ランドスケープエコロジー実習(A1A2)では、必修科目「ランドスケープエコロジー」で学んだ内容の応用編として、生物多様性や生態系サービスの考え方を応用した地理情報システムとフィールドワークを連動させた地域分析や計画の立案の基礎について学びます。保全生態学実習(S1など)では生物多様性保全や生態系修復のための野外調査法や実験技術を学びます。応用生物学基礎実験Ⅰ(S1など)では、農業生産にかかわる様々な生物や病原微生物、雑草、害虫などを対象として基礎的な生物学的実験手法を習得します。

4年生では、各研究室に所属して卒業研究活動を行います。

主な講義科目

ランドスケープエコロジー

担当教員:大黒俊哉(生圏システム学専攻)

ランドスケープエコロジーは、地域をひとつの生態系として総合的に捉え、そこでの自然的・社会的要素の相互関係の理解を通じて、望ましい地域環境構築のための評価・計画手法の提案を目指す俯瞰的な研究分野である。この講義の前半ではまず、地理学、生態学、緑地学の3分野にまたがって発展してきたランドスケープエコロジー(地域生態学)の概念と方法について論じる。つぎに、地域環境を総合的かつ定量的に捉えるツールとしての環境情報科学の基礎的な理論と応用についての理解を深める。後半では、ランドスケープエコロジーの応用場面として、生態系保全、里地里山の保全と再生、土地荒廃の防止、環境モニタリングと評価、エコロジカルプラニングなどを例に、具体的な課題解決に向けたアプローチを紹介し、ランドスケープエコロジーの応用可能性について概説する。

自然共生社会論

担当教員:橋本禅(生圏システム学専攻)

国立公園を含む自然公園から出発した日本の自然環境行政は、近年、里山里海といった二次的自然域を取り込んで大きく拡大した。また、生物多様性・生態系サービスへの認識の高まりとともに、その科学的評価やそれに基づく自然再生事業のような取り組みも盛んになった。また、国内各地における世界自然遺産の登録やSATOYAMAイニシアティブの推進に見られるように、国際的な視野をもった取り組みも始まっている。この講義では、教員自身の経験も踏まえ、こうした取り組みを具体的に論述するとともに、自然共生社会実現に向けた課題を検討する。

保全生態学

担当教員:吉田丈人(生圏システム学専攻)・曽我昌史(生圏システム学専攻)

人間は生態系サービスに依存することで存在を維持している。我々は、その生態系サービスのかなりの部分を生物多様性がもたらしていることを知らなければならない。本講義では、生物多様性の意味とその価値を科学的に学び、生物多様性が加速度的に失われている現状を知るとともに、生物多様性の保全、健全な生態系の維持にはどのような指針や技術が必要なのか、生態系の修復にはどのような管理手法が求められるのかを学ぶ。

緑地計画学

担当教員:山崎嵩拓・飯田晶子(工学系研究科都市工学専攻)、寺田徹(新領域創成科学研究科自然環境学専攻)

本講義の目的は、様々な空間を対象とした緑地計画のあり方とその背景を、多角的に論じることにある。本講義は4部からなる。第1部では、近代以降の都市における緑地計画について、とくに日本における都市公園の成立や、現代の都市における公園緑地の形態と機能を中心に論じる。第2部では、都市近郊の緑地計画について、都市近郊という空間の成立過程やその特性を踏まえながら論じる。第3部では、農村および国土レベルでの環境保全のあり方を、農村緑地の保全という観点から論じる。さらに第4部では、緑地計画を実現する枠組みとしての参加型計画のあり方について、環境アセスメント等に論及しつつ展望する。

都市農村計画学

担当教員:村上暁信(筑波大学)

概要:人口減少,都市の縮退といった社会的動向や,環境共生という社会的要請を背景として,都市と農村の関係は従前とは大きく異なってきている。これまでのような都市と農村を別々に扱う計画体系から脱却し,地域を一体的に整備していく計画手法の確立が求められているといえる。本講義では上記の問題意識のもと,まず都市計画の歴史,農村計画の歴史,都市と農村の関係の歴史について講義を行う。次に,地域づくり,まちづくりに関する基礎知識として都市計画や地域計画制度等の活用方法,その適用の実際について講義を行う。その上で,今後の都市農村の一体的整備手法について,事例をもとに議論をしていく。

生態工学

担当教員:山田晋(東京農業大学)・横田樹広(東京都市大学)

生態工学は、緑の再生、復元、創出、保護等に関する計画、施工、管理などを対象とする総合科学である。緑は大気浄化、浸食防止、水源涵養、景観保全の機能のほか、最近特に問題となっている都市のヒートアイランド現象の緩和、二酸化炭素固定、生物多様性維持などの機能も持つ。多面的な機能を発揮できる緑を再生、復元、創出する緑化技術の役割は重要である。講義では、最初に、計画時に重要となる対象地の環境、目標、素材や工法などに関して解説し、その後に、具体的な生態工学技術について実例を挙げながら紹介し、問題点や今後の方向性について論じる。

実習実験科目

緑地デザイン実習

担当教員:植田直樹(株式会社三菱地所設計)

緑地デザイン(ランドスケープデザイン)は、人間の生活環境に関する様々な問題を解決するための手段の一つである。自然環境と人間社会の両面から問題の本質を理解し、解決に向けた自らの考えを論理性かつ客観性をもって外部に発信するために必要となる基礎的な知識や手法を獲得すること、そして課題認識から計画設計、そしてプレゼンテーションに至る一連の作業を実習課題の中で実践することにより、自分のアイデアを社会性を伴った具体的な姿に転換するプロセスを学ぶ。

緑地環境実地実習

担当教員:大黒俊哉・橋本禅・甲野耀登(生圏システム学専攻)・寺田徹(新領域創成科学研究科自然環境学専攻)

本実習では、緑地空間を構成する緑地植物の分類と生態、緑地植物・植生の調査方法、緑地植物・植生の管理・育成の技法について、実地での観察および作業を通じて体得するとともに、都市から里地里山にいたる広範な緑地空間を実際に見学し、緑地空間をランドスケープとしてとらえる方法および緑地環境保全の実情について学ぶ。

保全生態学実習

担当教員:吉田丈人・曽我昌史

保全生態学の基礎となる野外調査および室内実験の手法、データ解析などについて学ぶ。野外実習(集中)では、西東京市にある生態調和農学機構において、水田の管理、イネの栽培方法について実習するとともに、水田や畑に依存して生息する様々な生物について観察し、環境保全型農業を実施するために必要な知識を習得する。また、実験室での実習では、外来生物の侵入の実態を調べる方法、遺伝子組換え技術により作出した環境負荷低減植物の解析法を学ぶ。本実習はフィールド科学専修と合同で行う。

ランドスケープエコロジー実習

担当教員:甲野耀登

講義科目「ランドスケープエコロジー」と連携しながら、講義において得られた知識をもとに、環境情報の処理、作成、解析の技法について学ぶ。近年地理情報システム(GIS)で扱うことのできる環境情報の整備が進む中で、緑地環境保全計画を策定していくために、こうした既存の情報をどのように活用していくかが重要になっている。そのために、本実習では、既存の情報を用いたシステムの構築手法を通じて、環境情報の判読について理解を深めるとともに緑地保全計画に必要な主題図を自ら作成する手法について実習を行う。本実習はフィールド科学専修と合同で行う。

応用生物学基礎実験Ⅰ

担当教員:応用生物学専修担当教員

応用生物学基礎実験Ⅰ(S1など)では、農業生産にかかわる様々な生物や病原微生物、雑草、害虫などを対象として基礎的な生物学的実験手法を習得する。本実験は応用生物学専修と合同で行う。