本研究室では、附属緑地植物実験所において、緑地を構成する植物に関する研究、および、緑地の持つ各種機能に関する研究を行ってきました。現在では、都市緑地をはじめ、河川の水辺、里山林など各種の緑地が持つ生物群集の維持機能に注目し、生物とそれを取り巻く環境条件の関係を明らかにすることにより、生物生息場所としてこれらの緑地を保全し、また再生していくために必要な知見を積み重ねつつあります。
都市緑地、里山林、河川水辺などの緑地における生物群集が、植生管理をはじめとする人為的な干渉、地形などの自然的要因、土地の履歴など歴史的な要因、さらに周辺の土地利用など景観生態学的要因などによりどのように影響を受けているかを、現地での生物調査に基づき明らかにすることを目指しています。研究成果は、これらの緑地の保全や再生のための環境評価や空間計画に応用できるものであることが望まれます。
ため池、用水路など農山村の各種水域は、様々な水生生物の生息場所として長年機能してきました。最近になって、これらの水域は次々と人工化され、あるいは消失しつつあります。これらの水域が生物群集の生息場所として有する価値を明らかにし、その保全策を検討するため、付着藻類、底生無脊椎動物、水草などの調査を行っています。個々の水域の持つ機能のみならず、水路によって連結された水域のネットワークとしての機能にも注目しています。
生物群集の調査結果に基づき、調査地点の生態環境評価を行うための方法の開発を進めています。現在は、多変量解析により、生物群集に影響を与える各種条件を明らかにするための手法や、その結果の地図化、さらにはある条件のもとで期待される生物群集を予測するための手法の開発に取り組んでいます。その成果は、上にあげた2つのテーマの研究に、逐次、利用されています。
都市に見られる動物の多くは、本来は森林など他の種類の生息場所で生活していたものが、都市の環境に順応して、あるいはそれを積極的に利用して、生息場所を広げてきたものと考えられます。これらの動物の生態や行動を、現地調査と、緑地植物実験所をフィールドとした野外実験により明らかにしようと試みています。
なお、各テーマの具体的な内容や、現在の研究の状況については、本研究室のホームページをご覧ください。
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小貝川のかつての流路の跡にできた池(写真左)で採集した珪藻Amphipleura lindheimeri Grunowの殻(写真右)。目にする機会は比較的少ない。珪藻のように、顕微鏡でなければ観察されない大きさの生物でも、近年減少している種があるとされるが、実態はほとんど明らかになっていない。肉眼で観察できる生物と異なり、実際の生息個体群を見つけて保全するというアプローチが困難なため、生息に関わる環境条件を明らかにして生息場所を分類し、それぞれのタイプの生息場所を確実に保全するというアプローチが必要だろう。 |
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